粛々と進む入庁式。
お偉いさんの挨拶も一通り終わり、次に労働組合からの挨拶となった。
労働組合という存在自体が新人職員には全く意味が分からず、テレビやメディアから流れる断片的な情報だけだったと思う。
・不当解雇された労働者と会社との争い
・労働者の各種権利を求める会社との争い
・労働組合のデモ行進
などとにかく「争い」ということしか新人職員の自分には分かっていなかった。他の新人職員も同じようなものだったと思う。
それだけ学生にとって労働組合とは馴染みがない存在とも言えるだろう。
で、労働組合の代表者の方の挨拶は、労働組合という組織が何か、みなさん(職員)にとって労働組合はいかに大事かという話を延々話され、最終的に、
「みなさんの労働組合への加盟こそが、役所?(何といっていたか覚えていない)の各種圧力からみなさんを守るためには不可欠なものなんです。職員の権利を不当に扱う管理組織に抵抗するため労働組合へぜひ加入してください!! 一致団結して戦いましょう。」
という話になった。
恐らく自分を含めて、新人職員のほとんどは『??』だらけだったと思う。
そもそも労働組合という組織意義すら分かっていなかったし、なぜ入庁式で労働組合からの挨拶があり、そしていきなり組織批判の話になるのか、というのことを新人職員1日目の連中に分かる訳がなかった。
そして、挨拶の最中にふとホールの壁を見れば、いつのまにか労働組合のメンバーと思わしき人たちが大挙しており、ホールの壁にずらっと並んで立っていた。
あの瞬間は正直怖かった・・・
一体何が始まるのか思うと、挨拶している代表者の方からマイクに向けて一言、
『今から労働組合への加入手続きを行いますので、一人でも多くの皆さんに加入して欲しいと思っています。加入は署名と印鑑だけですからすぐに終わります。では、どうぞよろしくお願いします。』
と。
「どうぞよろしくお願いします。」といきなり言われても・・・
と思っているうちに、壁に立っていた労働組合メンバーが加入用紙を抱えて一斉に押し寄せ、
「みなさんの権利を守るためのものですからぜひ加入を」
「何か組織とトラブルがあっても労働組合がきっちり守ります」
「職員のほぼ100%近くが加入していますから」
などほぼ強制加入に近い状態だった。
ある新人職員(たぶん法学部出身者)は、「なぜ労働組合に加入しなくてはならないのか、加入を強制させるのはナントカカントカの法に違反ですよね」と反抗したり、またある人は「いきなり加入しろって言われても意味分かんないっすけど」とちょっぴりキレたり抵抗する人も少なくはなかった。
ただ、加入しないと後が怖そうな感じがしたのも事実なので、結局ほとんど新人職員がその場で加入したと思う。
自分も加入する意味を聞いたが、加入しないという道はなさそうだったのでとりあえず加入することにした。
まあなんてこれに関しては意思が弱いというか、長いものに巻かれとくか、という気持ちだったのだと思う。
上に書いた法学部出身の彼もこの日は頑なに反抗していたが、後日相当な説得をされいやいや加入したらしい。
そして数年後には労働組合青年部(30歳以下)の幹部へとなっていた(笑)
思うにこの役所の労働組合という組織は確かにマスコミで報じられるような種々の問題もある組織ではあったけど、実際に自分自身も色々と悩みを聞いてもらったり新事業の説明をなぜか組織からではなく組合から説明を受けたり、また組合を通じて大勢の仲間ができたことも事実。
つまり、良い面や悪い面も様々持ち合わせているのが労働組合という組織だったと感じている。
個人的にはそれなりにお世話になったと感謝している。
しかし、この入庁式の加入勧誘に関してはいただけない方法だったと今でも思う。
右も左も分からない新人職員に対して、ほとんど十分な説明のないまま入庁式当日にほぼ無理やり加入させるような方法をとらなくても、もっと後日に時間をかけて「労働組合とは何か?労働組合の存在意義とは」などをしっかり説明することがまずだ大事だろうと思う。
説明がないまま中途半端に無理やり加入させるようなことをフツウな感覚として日頃から行ってしまうから、組合嫌いの職員が多数出てしまうのではないだろうか。
と、こんな感じで入庁式は無事に?終了。
続く。
【まとめリンク 第2章 入庁】
1 入庁1週間前
2 入庁式1 決意新たに
3 入庁式2 労働組合の勧誘
4 意味のない新人研修の始まり
5 日々飲み会に精進
6 新人研修とは何だったのか
7 希望配属先面談
8 配属辞令の交付
9 運命の分かれ道
10 局内研修の開始
11 局内研修
12 福祉か保健か