「まあまずはトップと同じ係の人から紹介するわな」
そう言われると別室に向かった。
別室の入り口には、「保健センター長室」と書かれている。
ノックし、中に入ると、50歳ほどの人のよさそうなおっちゃんが座っている。
「田坂所長、忙しいところすいません。今日から配属されました須田くんです。大卒なんでたぶん仕事できるはずですわ。」
「大卒だから仕事ができるとは関係ないし、そもそもそこまで珍しい存在なのか大卒というのは?」と心のなかで一瞬思ったが、それより挨拶だ挨拶と思い、先程したような同じような自己紹介をした。
「まあ~ そうだね、頑張ってよ。期待してるから」
とさして目もあわしてもらえず、ただそれだけ言われその部屋を後にした。
なんとまああっさりしているんだろうか・・・
最初くらいもうちょっと声をかけてくれても。。。
次に案内されたのは、事務スペースの奥に横並びで全フロアが見渡せるように座っている重鎮っぽい二人。
「おぅ、須田くんか。さっきの挨拶よかったやんけ。まあ頑張れや。よろしゅう頼んますわな」
とコテコテな大阪弁で挨拶されたのが見た目からして武闘派っぽい藤本課長。
なぜか右手の拳で壁をゴツゴツ叩きながら。
空手か武闘か何か分からないけど、怒らすとヤバそうな臭いが見た目からプンプンとした。
そして横のメガネをかけた人が八尾課長代理。
藤本課長とは全く違う感じの落ち着いた感じの課長代理だ。
「はい。はじめまして八尾です。保健センターに大卒が配属されるのは珍しいことだけど、最近は大卒高卒関係なく現場にまずは新人として経験させるというのが上の考えらしいからしっかりここで勉強していって。期待しているから頑張ってください。」
なるほど。理論派だこの人は。
そして次の席に移動。
席に座っているその人は終始ニコニコし、非常に人がよさそうな雰囲気の60歳くらいの人で、
「この人が手島係長。まあワシたちの島(係)のトップという訳。何か分からないことがあったら手島係長に聞いたらいいから」とおっちゃん職員に紹介された。
「ようこそ○○保健センターへ。よく来てくれたね。私はね今年1年でもう定年だから、最後にいろいろ教えてあげられるようにするから頑張って。分からないことあったら何でもまずは私に聞いてね。」
『お~めちゃ人のよさそうな係長だ。これはラッキーかもしれないぞ』
とちょっと嬉しくなった。
ただこの時は知る由もなかった。
この人のよさそうな係長が新人キラーとして局内に名を轟かす有名な鬼係長だとは。。。
そして、手島係長の定年までの1年間、ひたすら説教と小言が繰り返される毎日が始まるとは。。。
続く。