公務員に合格したのは、1年生の真夏。
大学院ではすでに前期が終了していた。
大阪市役所の公務員試験に合格した翌日、さっそく大学院の友人やゼミ教授に報告しにいこうと思った。
といっても夏休みだったのでメールでしかできなかったが。
友人たちは手放しで喜んでくれ、送別会まで開いてくれることになった。
そう、送別会。
合格後すぐに大阪市役所の試験を監督する部署に電話し、大学院は辞めたほうがいいのか、それとも土日や夜間などに通ってもいいのかを確認したところ、「どちらでも問題」ないという回答だったが、自分の中では、大学院を続けながら働くという中途半端な気持ちで仕事を行うことに抵抗感もあったので、いったん大学院を辞めることに決めた。
一旦というのは、中退後5年以内なら再び復学できるという制度があったので、また勉強したくなったら戻ってこようと。
それより今は、一日も早く公務員として働き、一人前の行政マンになりたいという思いのほうが遥かに強かったと思う。
ゼミ教授への合格報告は、結局夏休み期間中ということもあり、なかなか連絡がとれずに合格発表から10日ほど経過してからだった。
教授には相当に厳しく指導されていたし、生粋のビジネスマンだった人なので、正直言うのはためらいがあった。
『君な~ 何も一丁前にできないのに、公務員なんかなってどうすんの? 一体何のために大学院来たの?』
に近いことを説教くさく言われるんだろうな、と想像していた。
が、伝えたあとの結果は想像外のもの。
失礼な言い方かもしれないが、まさか素直に喜んでもらい、そして大いに祝福してもらえたのだ!
『君が途中でここを辞めてしまうことは残念ではあるけど、君が選んだ道だからそれを突き進めばいい。大学院なんて理論を学ぶところなのだから、ここで学んだことを実践の場で活かすことができてこそが教育の醍醐味なんだよ。残念だけど頑張りたまえよ君』
さすがに教授の前で泣くことはなかったが、あれほどジーンと胸に熱いものが来くことはそうそうあるものではないだろう。
とことん厳しく指導され、時には大いに反発心が芽生えたこともあったが、それも吹き飛んでしまった。
人の気持ちなんて単純なものかもしれない。
厳しく接しられるとどうしても反発してしまうが、温かい言葉を投げかけられると途端に懐柔してしまう。
まさに「アメとムチ」といえるかもしれないが、長年銀行の役員として活動されていた人は、人の扱いもそこらの教授たちとは違うなと本当に感心した。
市役所入庁までこの時は半年前。
一日も早く働きたい。
その気持ちが日々高まっていった。
続く。
【まとめリンク 第1章 公務員試験】
1 大学院へ
2 プライオリティを身につけろ
3 役所と起業家精神
4 イカした公務員を発見
5 役人らしくない公務員
6 公務員試験5ヶ月前からの勉強
7 大阪市か京都市か
8 大阪市を受験した理由
9 試験当日
10 まさかの合格
11 記憶にない2次試験
12 いよいよ最終面接
13 合格発表
14 恩師からの言葉
15 合格発表後の懇親会
16 大学院中退へ