ドラマ「歸國」の感想

今日は昨日の奈良万燈籠の疲れからか家でゴロゴロしてテレビを久しぶりに色々見た。
まず見たのは、たまたまチャンネルを回してやっていたヒストリーチャンネルの「8.15玉音放送を死守せよ」。
2時間きっちりと偽りだらけの大本営発表がいかにラジオで全国に流されたかを特集した数年前のNHK特集の再放送。
次に見たのは、ネットでアメピグでもやろうかと思ってパソコンを立ち上げたら、ヤフートップページに「終戦記念日ははだしのゲンを見よう!」というテキストバナーがあったアニメ映画版「はだしのゲン」。


クリックしたら始まったのでつい1時間半見てしまった。
なんでもこのアニメ版は放映当初は全国の学校でも教育用に放映されたらしいけど、段々と原爆投下後の描写が生々しい、ということで投下後の描写がゆるい別版が流されるようになったらしい。

これってどうなんだろうか。そりゃ確かにアニメ版なのに刺激は強めだったけど・・・
生々しいのは分かるけど、でもそれが戦争の怖さってもんでしょ、と思った。


そして夜に昨日TBSで放映されたドラマ「歸國(きこく)」を見た。
内容は戦争で死んだ人たちが現代の東京駅に数時間だけ戻ってくるというもの。


ビートたけし、長渕剛、ARATAの演技に非常に迫力あり、笑い一切なしのシリアスな非常によく出来た内容だった。
こんなしっかりとしたドラマを見ることができて運がいい。


本当は今日は、19時から「池上彰の戦争を考えるSP」を見ようかと思ったけど、番組表を見たら「AKBも驚いた貴重映像・・・」と何だか非常に戦争を軽々しく扱っているような、急に腹立たしい気持ちになり見るのをやめた。
真剣な番組、今日という日にこんな要素は必要ないんじゃないだろうか。


で、話を戻してドラマ「歸國」。
かなり重いストーリー展開だったけど、特に印象に残ったシーンとしては、ドラマ終盤に「人は二度死ぬ。1度目は肉体が消えてなくなったとき、2度目は完全に忘れ去られたとき」というシーンと、「今の日本人は物質的には満たされていっても、心はどんどん貧しくなっているんじゃないのか」というもの。
どちらもよく聞く言葉ではあるけど、非常に納得できる言葉だと思う。


ただ、2つ目の言葉は、

「死んだ英霊たちは今の日本を見てどう思うと思うんだ?こんな日本にするために死んでいったのか」

的な展開から発生した言葉があったけど自分はこの部分は思わない。ここだけは違う考え方をもった。


この展開、物質的に日本は豊かではあるが、心は貧しくなる一方だから今の日本人は不幸せだ、と言いたいのだろうけど、今の日本を見て「不幸せ」と感じるなら、それこそ戦没者に対して失礼な話ではだいだろうか。


戦争で亡くなった人の多くが、「日本を守り、日本を豊かにするために死ぬ覚悟はできている」という前提に立つなら、当時の「豊かにする」という言葉は、精神面での豊かさよりも、食べるもの、生きていくのに必要なモノという物質面での豊かさを求めているのではないだろうか。


そもそも精神面の豊かさは物資面がある程度満たされていないと簡単に満たされるものではないと思う。

物質面の豊かさとは、別にモノが周りに溢れている、という状態でなくとも、生きていくことには困らないモノが周りにあり、当然のごとく食べるものにも困らない事を指すとするなら、最低限の生活が送れないと精神面での豊かさはなかなか現れないと思う。


それをドラマ内では、
「今の日本は食べるものも、着るものも、住むところも困らないですよ。でも日本古来からの家族基盤は崩壊しつつあるし、ガキは携帯ばかり触ってるし、子供は歌を歌わなくなったし、だから日本は豊かじゃないかもしれない」
と考えることは非常に平和ボケというか非礼な考え方だと思う。


ドラマに登場してきた南方戦線にいた兵士の食料飢餓、マラリアで瀕死の兵士たち、本土の劣悪な食料事情の立場から今の日本のこの考え方を見たらどう思うだろうか。
まさに平和ボケもいいとこだろうと思う。


今の日本人は文句ばかりはブツブツ言うわりに何でも望みすぎなんじゃないだろうか。
「生活には困ってないんですよ、でも心が全然満たされてなくて・・・」という言葉を果たして65年前に言えるのか。


心が満たされていない、という問題提起は、現在の豊かさ・ゆとりある生活の延長上に発生した問題だと考えるが大事なのではと思った。


最後に沖縄へ向かう戦艦大和の臼淵大尉の有名な名言。
進歩のない者は決して勝たない。負けて目覚めることが最上の道だ。
日本は進歩ということを軽んじすぎた。
私的な潔癖や徳義にこだわって、真の進歩を忘れていた。
敗れて目覚める。
それ以外に、どうして日本は救われるか。
今、目覚めずしていつ救われるか。
俺たちは、その先導になるのだ。
日本の新生に先駆けて散る。まさに本望じゃないか。



この台詞を聞いてもまだ「モノはあるけど、心が満たされなくて・・・」なんて言えるだろうか。
心が満たされていない、なんてつまらんこと言ってないで、先人たちのこの思いを受け、自分たちができる最良のことをする。
その積み重ねがこのドラマが目指している豊かな国を作っていくんじゃないだろうか、と思った。
以上、まさに終戦記念日という一日でした。

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