せっかく頑張って公務員になったものの、役所内の旧態依然とした体制や仕事観の相違、社内の人間関係から公務員を辞め、別の人生を歩みだそうと考えられている方は少なくありません。
現に全国の公務員350万人のうち、仮に1%が真剣に別の人生を歩もうと考えているとしても3.5万人が同じように悩み、真剣に退職を検討していることになります。
私の同期生は事務職80名おりましたが、既に4分の1以上が様々な理由で退職しています。
働かなくとも生活に問題のない方を除いて退職後は、
・民間企業への転職
・弁護士や公認会計士など士業として独立する(目指す)
・会社やお店を開くなど起業する
など「転職」か「独立起業」を目指すのが一般的です。
ただし、公務員という特殊な環境からの転業の場合は色々と注意しないといけないことが多くあります。
A) 共通していること
・雇用保険に注意
公務員には雇用保険がないため退職しても失業保険がありません。
民間企業で働いていた場合は、失業保険というものが基本的にありますので、失業保険をもらいながら次の転職活動や独立起業の準備をすることが可能です。
そのため公務員は、退職=全くの無給 になる、ということが一般的です。
公務員と雇用保険の関わり合いについては、以下のページで紹介されています。
http://www.1sitsugyou.com/method/koumuin.htm
B) 転職の場合
・長い公務員経歴は不利!?
自力で転職活動をするなり、人材紹介会社等を使って活動する場合に絶対的に共通していることがあります。
それは専門職として特殊な仕事を公務員時代に経験していた方以外は、公務員時代の経験(キャリア)は、仕事経験(職歴)としてみなされないことです。
つまり、役所時代の職歴は、転職活動ではほぼ経歴としてはみなされない、ということです。
そのため、公務員経験が長くなればなるほど転職には不利になる傾向があります。
・総務系の仕事需要はあまりない
よく「公務員時代は総務系の仕事を長年していたので、総務系の仕事ができる会社に転職したい」というお声を聞きます。
ただ、残念ながら役所と民間の総務の仕事内容は大きくことなっているため、役所時代の総務系の経験はあまり活かすことができません。
また、一般的に会社の総務系の仕事は、20代~30代半ばまでの女性がするものという風潮が根強く、男性公務員の場合ですとなおさら民間会社の事務職に転向するのはかなり困難だとお考えください。
・社内からの厳しい視線に耐えられるか
世間一般的に公務員から民間企業へと転身した場合、「元公務員のくせに」という難癖をつけられる扱いを受けた、というのはよく聞く話です。
「公務員の仕事もまともにできないから辞めたんでしょ」
「役所で何か問題を起こしたから公務員を辞めたんじゃないの?」
というのが残念ながら世間一般の認識です。
こればかりは実際に入社しないと職場の雰囲気というのは分かりませんが、多かれ少なかれ不当な難癖をつけられることは覚悟してください。
C) 独立起業の場合
・1円を稼ぐ大変さ
公務員の初任給は約20万円です。これを独立起業するとなると、全て自分の力で稼がないといけなくなります。
20万円くらいの売上ならどうにかなるだろう、というのは甘すぎます。実際には20万円の売上ではなく20万円の利益を最低限上げないといけません。
売上-経費=利益ですので、事務所(店舗)家賃、光熱費、スタッフ人件費、商品の仕入れ原価など様々な経費負担が必要になりますので、独立起業当初は相当苦労するとお考えください。
・助成金はアテにできない
民間企業から独立する際には、雇用保険の各種創業助成金制度を使い、いくつかの助成金を利用することができます。
ただ残念ながら公務員からの独立起業の場合は、公務員は雇用保険に加入していないため助成金制度を十分に利用することができません。
・変な社会貢献意識は捨てるべき
起業家に多いタイプですが、「社会のために利益度外視でも社会に貢献(還元)したい」という話をよく聞きます。
ただ、こう言っている起業家の多くが、実際に起業すると3年以内に消えるか、全く別の事業をしたりしています。
社会に貢献したい、というのは非常に素晴らしい理念なのは間違いありませんが、企業とは業を企て利益を求め、企業を継続させるのがまずは根本の目的のはずです。
「社会貢献を全面に利益度外視で事業をしたいなら、ボランティア団体をやればいい」というのは私が起業前に創業30年の社長から言われた言葉です。
以上が大ざっぱな公務員からの転職や起業の注意事項になりますが、何より世間一般からの色眼鏡で見られるということを自覚する必要があります。
まだまだ公務員を辞め、転職・独立起業する人は多くはありません。
世間一般からは、
・元公務員なんだ、へぇ~
・公務員してた人に仕事なんてできるの?
・おとなしく公務員しとけばよかったのにね
なんてことは必ず一度は言われます。
これらの言葉がグサリと刺さり、もうどうしようもなく気になってしまいそうなら公務員を続けられたほうがいいかもしれません。
なんだかんだと、公務員ほど待遇や福利厚生が恵まれている組織はありません。
失って初めてそのありがたみというか、ものすごさが分かるものです。
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